愛ある仕事の積み重ねー上野剛児さんの工房を訪問しました


上野剛児さんは、とても愛嬌のある方だなぁと思っていました。

いつも納品の時には可愛らしい文字で「大屋さーん!」とお手紙を同梱してくれたり、時にはビデオレターを送ってくださったり・・・。

でも、工房を拝見して、愛嬌のある・・・確かにそうなのだけれど、すこし違う印象に変わったのでした。

ちょっと長いです。時間のある時にご覧いただけたら幸いです。

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高松市街から徳島方面へ40分ほど高速を走り、のどかな山里がつづく道を少し外れたところで・・・迷った。ナビではここなんだけどな・・・。

上野さんに電話するも、よく分からず結局途中まで迎えに来ていただくことに。

木々が生い茂る森の中の小道を、颯爽と走る上野さんの車になんとかついていくと・・・

突然視界が広がり、火の谷窯、上野さんのご自宅兼工房に到着しました。

なんだかおとぎ話のような感覚。森を抜けて別世界に来たような。

またまた驚くことに、このご自宅も工房も、ほとんど上野さんとご家族、そしてごゆうじんで作られたとのこと!

あまりに仕上がりが美しく、DIYとは思えない・・・。 

美しい景色の大壷。
底が上なのは、お水がたまって蚊がわかないようにするためなんだそう。

 

どうぞ、とドアを開けると、ちいさきひとがお出迎え。

味のある土壁もご自分で塗られたという。

 

この階段ももちろん、手作り。
そして階段の柱にくくりつけられているのは、ブランコ!



目の前は森が広がる窓。

あまりパシャパシャ写真を撮ると失礼かなぁと撮れませんでしたが、
まるで南国のコテージのようなウッドデッキがありました。

いやー、心地よい。
夜空を見上げながらの晩酌も、よいだろうなー。



素敵な掘りごたつの円卓で(これも写真なくごめんなさい・・・)
アイスコーヒーとお菓子をいただきました。

苔むす景色を想わせる、ひんやりアイスコーヒーが入ったカップ。
上野さんのかたちは、まるみがありつつ、洗練されていて、絶妙によいかたち。


コーヒーのとろりとした感じも、またガラスとは違う趣。
このカップは、ちょっとヒビが入ってしまいご自宅用となったそう。

いい景色なのに、ひびがはいってしまうと作品としては出せなくなってしまう・・・シビアな世界です。


お茶もたまらん表情の片口で出していただきましたよ。
こちらの木のお盆も上野さんが制作されたとのこと。
なんだか韓国の古いもののよう・・・。

素朴で丁寧・・・よい佇まい。
ディスプレイ用に制作されて、クラフトフェアでうつわを載せて展示していると、ある女性からどうしても譲って欲しいと言われたそうで、でも気に入っているし、木工作家ではないからと固辞されたそう。

なので、問い合わせはNGでお願いします(^^)

っなんて色々お話ししていると・・・

上野さんの息子さんが「子鹿が来た!」っと教えてくれました。

わかりますか?
真ん中ちょっと上に白いおしりが写っています。
あたふたしてたら、逃げて行っちゃいました。
あー、望遠レンズ欲しい。。。

ますます、おとぎ話に迷い込んだような感覚になってきました。

そして、隣接する工房へ、ご案内いただきました。

集中力が高まりそうな制作の場。
天井が高く、風がよく通ります。
窓からは森の気配・・・。

ここにも、ちいさきもの・・・
夢を食べるバグ・・・これからお嬢さんが絵付けされるという。
完成が楽しみですね。

師匠の森岡成好さんの言葉が飾ってありました。
修行時代に、覚えたこと、体験したことが基となり、今があるとのこと。

「不器用なんです。修行時代も、へたっくそやなぁとよく怒られてました。」
と語る上野さん。
めったに弟子に教えない森岡さんが、見かねて教えてくれたほどだという。

いやいや、これだけの建物や、専門外のお盆、ブランコを目の当たりにした後で、まっすぐに紙すら切れない私にはにわかに信じがたいお話しでしたが
その分「丁寧に・・・」と思っているという。

そうか、上野さんのお仕事は丁寧なんだ。
ついつい焼締の豊かな表情や上野さんの柔らかなお人柄で見逃していたのかもしれない。
うつわのかたちはもちろんだけれど、急須の取っ手や以前企画展にあわせてお作りいただいた茶こし・・・全てが丁寧でどこか愛がある。

なんだか胸が熱くなりました。

そんな思いを抱きながら、窯を見せていただくことに・・・。

大量の薪・・・入口にもありましたね。

窯の仕事は、薪を用意することも大きなウェートを占めるという。

「ホームセンターで買えればいいんですけどねぇ。薪むちゃくちゃ高いじゃないですか?」

・・・そうなんだ。そりゃ、こんなに買ったら大変だ!

安く譲っていただける木材を細かく切ってストックしているという。

もう、あの話を聞いた後なので、積み上げられた薪すら美しい。

次は窯へ・・・。

すごく長い窯です!焼成時間も長い。
釉薬ものだと2、3日、焼締の窯だと6、7日かけて焚き、同じだけかけて冷やす。

毎回、真剣勝負。
それでも、一度も100%満足したことはなく、次に生かす何か課題があるという。

空気を調節する鉄のダンパーも手作り。
今回の窯で、壊れてしまったそう・・・。
上野さんのInstagram より

窯も本当に綺麗で、美しく、どこか神々しく思えました。

それなのに、気持ちがうわずっていたからか、思いの外良い写真が撮れず・・・。と思っていたら、また上野さんのInstagramで美しいお写真を発見。

お写真使わせていただけないか、お話しすると個展を控えお忙しいのにオリジナルを送っていただきました。

神々しい、わかっていただけましたか?
窯詰めの後はますます神々しく・・・。

丁寧に、愛をこめて、作られた薪の窯のうつわ。

作られた背景を想い、そのうつわを手に取る必要はないと思いますが、どこかで感じていただけたら幸いです。

今はあまり在庫が豊富ではありませんが、それでも冬の食卓やお茶時間に楽しんでいただけそうなうつわ、ございます。


よろしければお立ち寄りくださいませ。

左の片口小鉢はオンラインショップの準備ができておりません。
ご興味のある方はお問い合わせください。


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